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7月21日 被爆者の会が広島市長に要望書(平和宣言等について)

広島市長  松井一實様              
ご担当課  健康福祉局原爆被害対策部調査課 御中
 
(写し)日本国内閣府気付
   内閣総理大臣 安倍晋三様
   外務大臣   岸田文雄様
   防衛大臣   中谷 元様

 
平成28年度広島市平和宣言等に係る要請
「広報番号:HA2018-07/2」平成27年7月吉日
 
前略
 本年5月27日に、オバマ合衆国大統領が広島を訪問され、被爆者の方と心からの交歓が行われたことは、ひとえに、首相官邸・外務省ならびに広島市長及び関係各位のご努力の賜物であり、深く敬意と感謝を申し上げます。行事そのものについては、様々な評価があることを承知しておりますが、所謂「核無き世界」をどのようなプロセスで実現可能か、また、それがどのような世界かは歴史的、政治的、心理的によく研究すべきものとは思います。しかし、少なくとも昨年のNPT再検討会議決裂の原因になった中国や韓国等による「日本は第二次世界大戦の加害者ではなく被害者であるように描こうとしており、被爆地訪問要請は歴史を歪曲するものだ」という専横への明示的なカウンターになったのは間違いないと評価致します。さて、オバマ氏の広島訪問が、今年の広島市平和宣言で言及される報道がありました。そうならば、市長におかれては「核廃絶の願望」に止まらず、直後の国際仲裁裁判所判決への中国の公然たる反旗、わが尖閣への軍艦侵入等への具体的対応への言及がなければ、いかにして私たちの平和を守るかを主眼とすべき平和宣言そのものが、願望をもってする安直な作品となり、実体なき空想の誹りを免れません。この点をご検討賜りたくお願い申し上げます。又別途要請もあります。    草々 
                     
平和と安全を求める被爆者たちの会  代 表 山本 匡(被爆二世)
         同上      副代表 池中美平(被爆二世)(文責)
 

TEL 082-831-6205 FAX 082-831-6206
http://www.realpas.com

 
 
 
平成28年度広島市平和宣言に関する要請(本文)
 
1. 国際仲裁裁判所の判決について平和宣言への組み込み要請
 
 フィリピンの提訴した同国の管轄にあるスカボロー礁への中国の侵入と居座りに対して、国際仲裁裁判所は、7月12日、提訴した同諸島のみならず(1)中国主張のいわゆる九段線以内のすべての主張する権益を認めない。(2)低潮高位の岩礁を埋め立てても「島」とは認めない。(3)島でない岩のEEZを認めない、等という中国全面敗訴の判決が下されました。と言っても、この内容は国連海洋法条約の文言通りでしかありませんが。しかし、中国はこれに対して、「判決は無効」「反中陰謀」「判決文は紙切れに過ぎない」として、さらに凶暴さを増しているのは御存じの通りです。また、わが尖閣諸島には2010年9月に一方的な自国の領海基線組み込みを発表し、2012年9月には「日本の公務船や自衛隊が魚釣島海域に入れば『侵入』になる」「外国の軍事船舶が魚釣島海域に入るには、中国政府の認可を得なければならず、東中国海の境界線確定をめぐる中日間の話し合いの余地はなくなった」と公言しました。
 そして今、この公言通りに日本や他国の主権を犯して平気です。
中国は、東シナ海でも、南シナ海でも自国都合だけの、交渉無しのごり押しで、主権侵害行動を続けています。その力には当然に正面の海空軍力だけではなく、背景の核兵器があるのは言うまでもありません。また、昨年も指摘したように、中国の核兵器増強と多核弾頭化、ロシアのデンマークへの核恫喝など、オバマ氏の口吻とは真逆の世界が現実です。失礼ながらオバマ氏には、国際外交筋からは「高説は垂れるが何もしない大統領」との定評があるようです。シリア問題への遅すぎる対応、南シナ海への形だけの「航行の自由」など、中国は既にアメリカの足元を見ていると考えられています。
 オバマ氏の広島演説は、残り任期が無いだけに、プラハ演説と比較すれば、一段と具体策のない高邁な理想だけが突出しています。従って、この広島演説だけを宣言に取り込んだとすれば、足元の現実に目を瞑る幻想の平和をまき散らすだけの「広島平和宣言」になることを恐れます。日本の現実は「生きている間には実現しない」では済まされない、「生きている間」の問題なので、必ず組み入れられることを要請します。
 
2. 被爆者代表から要望を聞く会への意見
 
 本件は、今年で連続3年の意見表明を行っています。何度も指摘しましたが、「被爆者代表」
と称する者は選定手続きのあいまいさのために、「代表」とは認められません。(広原調第37号、
平成26年7月17日)今年も過去同様の選定手続きが行われており、またも「安保関連法撤廃
要望」が述べられる可能性があります。それも、オバマ氏の「核廃絶の勇気」なる高邁な言説
を根拠にして。
しかし、かかる政治的問題を特定の立場から、被爆者だからと言って、"要望"する場が与え
られることに違和感を禁じ得ません。直近の選挙で反対派は破れたのですから、議会外で蒸し
返す権限がどこにあるのでしょうか? もし外交・安全保障方策への発言が為されるのであれ
ば、同等の資格を持って、異なる意見の被爆者等への発言機会も与えられてしかるべきだと主
張します。官邸並びに市長に置かれては、この「行事」自体の有り方への再考を要請します。
                                    以上
 
 
★プリントして見る場合(A4 2枚)
http://www.jp-pride.com/ftp/280721.pdf