TOP > 更新情報 > 11月29日 【広島】 子供たちに日本の誇り、天皇、憲法を語る校長の講演会 現役教師・学生歓迎!
秋季講演会
「子供たちに日本の誇りを語って」
~国を愛し、郷土を愛し、人を愛する~
講師 勇志国際高等学校校長
野田将晴氏
参加費 1,000円
★学生無料 教師を目指す学生さんもぜひご参加ください。
★参加お申込み・お問い合わせ
TEL 082-831-6205 事務局
メール info@jp-pride.com
戦後教育のタブーに挑戦する高校に
─勇志国際高校では、本年度から憲法の授業を実践され、生徒の意識が護憲から改憲へと大きく変わって
いると伺いました。実際にどのような授業をされ、どのような成果があがっているのか、お話を伺いたいと
思います。
まず、勇志国際高校は通信制の高校ですが、どのような学校なのか、簡単にご紹介いただけますか。
野田 勇志国際高校は熊本県で唯一の離島の町、天草市御所浦にあり、開校十年目に入りました。平成十七
年に教育特区で認可をいただき通信制高校としてスタートし、平成二十二年に熊本県から学校法人の認可を
いただき、通信制ではありますが、普通の私立高校になりました。お蔭様で生徒は増えておりまして、開校
当初は百十四名だったのが、九年目の昨年度は千三百人になりました。
「勇志の心」と題する校訓は、「国を愛し、郷土を愛し、人を愛する」です。熊本叡径理事長とは古くから
の付き合いで、勇志国際高校の設立に当っては、最初に彼から話がありました。それで二人でいろいろ意見
交換する中で、戦後教育を真っ向から否定して、タブーに挑戦するような学校にしよう。道徳、日本史を正
課として取り入れ、愛国者を育成するという時代の要請に応えよう、ということで意見が一致し、そういう
ことならと、私も校長を引き受けました。
通信制というのは、日頃は自宅学習です。生徒が定期的に決まった枚数のレポートを提出し、それを添削指
導するというのが基本です。しかし、年間決められた時間数は、面接指導を受けなければなりません。教室
に来て直接の授業を受けるスクーリングですが、福岡や千葉などの学習センターでは通学型のスクーリング
もできますが、大多数は集中スクーリングで、全国から御所浦に集まって、四泊五日の合宿形式でやります
。集中スクーリングは、四~五十人ぐらいの規模で、年間二十二回やっていて、生徒は回ごとに替わります
。
通信制の生徒の特徴は、約七割が不登校経験者、約二割がいわゆる「ヤンチャ系」――昔でいう不良、そし
て約一割がメンタルシック、精神的な病を抱えている生徒です。それぞれが問題を抱えて、しかし何とか高
校卒業資格だけは取りたいという思いで入ってきます。
ですから、普通の通信制高校ですと、何とか卒業させて、高校卒業資格を取ってもらえればそれでいいので
すが、私たちはそうはいきません。様々な問題を抱えた、いうなればマイナスの状態で来た生徒たちを、い
かに国家のために役に立つ、プラスの状態で送り出すかということに力を注いで、この十年間、取り組んで
きました。
天皇陛下の授業で生徒たちが感動
─憲法の授業は、全てのスクーリングで行われるわけですね。他にも、天皇陛下の授業もされていると伺
いましたが。
野田 天皇陛下の授業は、「総合学習」の中でやっています。三年で一巡するように、三つのテーマを定め
ています。一年目は「ご公務」。御即位二十年の記念に内閣府が作ったDVDを使ってやります。二年目は
「ご巡幸」。今上陛下の東日本大震災の被災地お見舞いから、昭和天皇の戦後のご巡幸までやります。三年
目は「終戦のご聖断」。すごいですよ。どんなに態度が悪い生徒でも、天皇陛下の授業は姿勢を正して聞い
ていますからね。
私は「教育は感動だ」と言っているのですが、人は誰しも感動を与えてくれた人を裏切りません。その人に
心を開きます。では私たち教師、特に我が校の若い教師が生徒に感動を与えることができるかといえば、そ
んな素養も人生経験も持っていません。では、どうすればいいか。天皇陛下の授業をやればいいのです。天
皇陛下の授業をやれば、生徒は感動します。そうすると、生徒はそういう感動を与えてくれた先生まで尊敬
するようになるのです。
天皇陛下の授業は、平成二十年に内閣府がDVDを出してすぐ始めました。入ってきたばかりの新任の教師
にも授業をさせるのですが、最初どうすればいいか分からないわけです。それはそうです。天皇陛下のこと
を何も知らないし、勉強したこともないのですから。一番最初に授業を行った時も、新任の女性の教員が、
「どうしたらいいか分かりません」と言って相談に来るわけです。それで、資料を指示して勉強させて、「
その後にもう一度来い」と言いました。次に彼女が来た時に「どうだった」と聞くと、「感動しました。天
皇陛下がこんなに素晴らしいなんて、生まれて初めて知りました」と言うものですから、「勉強して感動し
たそのままを生徒に語りなさい」と。そこから始まりました。
自分が感動したことを話せば、生徒もまた感動するのです。「天皇陛下って、こんなに素晴らしい方だった
のか」「日本人に生まれてよかった」と、みんな感動します。そうすると、その若い先生まで尊敬されるの
です。この授業をやり始めて学校全体が引き締まりました。日本はすごい国だとつくづく思います。何故他
の学校で天皇陛下の授業をやらないのでしょうか。やれば、先生たちの教育力はいや増しに高まっていくこ
とを確信しています。
文科省の通知と朝日新聞の「出前平和授業」
─憲法の授業は、どのような経緯で始められたのですか。
野田 きっかけは、今年六月に改正国民投票法が成立したことです。この法律によって、投票年齢が四年の
経過措置の後、十八歳以上に引き下げられることになったわけです。四年後の十八歳といえば、今の十四歳
です。ということは高校生はもちろん、中学生まで入ります。学校としては当然の義務として、憲法に対す
る正しい知識を与えなければなりません。それで、「特別活動」として「憲法学習」を始めました。
すると八月になって、各学校の校長宛に「憲法教育の充実を図るように」という文科省の通知が届けられま
した。要するに、総務省から文科省に「法改正の趣旨に基づいて憲法教育の充実を図ってほしい」という依
頼があって、それを文科省が各都道府県の教育委員会と私学担当の知事部局を通して、全国の小中高校の校
長に下ろしたわけです。衆参両院の付帯決議に、「学校教育における憲法教育等の充実を図ること」とある
ことも、私はそれで知りました。
通知には、総務省の文科省宛の依頼文も添付されていましたが、そこには「関係機関等に改正法について周
知いただくとともに、各学校が、例えば、選挙管理委員会や選挙啓発団体と連携し、模擬投票や出前授業な
どの多様な参加・体験型学習を実施するなど、憲法や政治に関する教育の一層の充実に取り組んでいただく
ようお願い申し上げます」とありました。
そうしましたら、お盆の頃だったと思いますが、朝日新聞から各小中高校の校長宛に「朝日新聞社員による
出前授業をします」という案内が届いたのです。二コマ使って、一コマ目が「新聞の読み方・活用術」、二
コマ目が「出前平和授業」となっています。この「出前平和授業」の説明には、「朝日新聞の記事を紹介し
つつ、憲法改憲や集団的自衛権をテーマに世界平和を希求することの大切さを学びます」とあります。
総務省の「模擬投票や出前授業をしてほしい」という依頼文が各学校に下ろされたら、間髪入れずに朝日新
聞は「出前平和授業をやります」という案内を送っているわけです。
問題は、政府から「出前授業をやりなさい」と言われ、学校にはその選択肢として朝日新聞の「出前平和授
業」しか与えられていない、ということです。
先日、自民党熊本県連主催の憲法集会で、憲法改正推進本部長の船田元氏が講演していましたが、自民党と
しては、二年後に最初の憲法改正をして、それから五年かけて部分改正を行い、一年に一回ずつ国民投票を
行うという考えのようです。そうすると、最後の国民投票は七年後になりますから、その時に十八歳といえ
ば、今の十一歳です。これらの子供たちが将来国民投票に与える影響は小さくありません。にもかかわらず
、選択肢が朝日の平和授業しかなければ、子供たちがみんな護憲になって送り出されるということにもなり
かねません。改憲を前提とした憲法教育の充実をいかに図るかは、極めて重要な課題だと思います。
憲法学習で改憲が一七%から七六・五%に
―─実際に憲法授業を行われて、生徒たちの反応はいかがですか。
野田 「憲法学習」はこれまで九回行って、三百二十名が受けました。一回二時間の授業です。授業前と授
業後にアンケートを取っているのですが、非常に面白い結果が出ています。
授業前は三百二十名のうち、五十五人(一七%)が改憲、三十五名(一一%)が護憲、「分からない」が二
百三十名(七二%)です。改憲より護憲の方が少ないのですね。あれだけ学校で護憲教育が行われているの
にもかかわらず、それがあまり効を奏していないことが分かります。
ただ、問題は「分からない」と答えた七割を越える大多数の生徒です。感想文を読むと分かるのですが、こ
れが限りなく護憲に近い「分からない」なのです。国民投票で「賛成」「反対」のどちらかに投票しなけれ
ばならないということになると、憲法改正に反対票を投ずる可能性が極めて高い。
それが、授業後のアンケートでは、二百四十五名(七六・五%)が改憲になり、護憲は二十四名(七・五%
)に減りました。それでも「分からない」と答えているのが五十一名(一六%)いるのですが、感想文を読
むと、今度は限りなく改憲に近い「分からない」なのです。ですから、総務省から「模擬投票をやるように
」と言われて、授業の最後に模擬投票をするようにしたのですが、模擬投票で憲法改正が一〇〇%になるこ
ともあります。
これは今の国民のバロメーターと思っていいと思います。今国民投票をやったら、賛成、反対がどういう割
合になるかということはある程度見えてきますし、きちんと指導すればこんなに変わるという貴重な資料に
なるのではないかと思います。
「改憲=戦争」か「改憲=平和」か、国民的大論争を
─改憲が一七%から七六・五%に変わるというのは、大変な数字ですね。授業はどのような内容でされて
いるのですか。
野田 最初に私の方から、なぜ特別活動で憲法学習を実施するのか、その理由を話します。まず国民投票法
成立の意味について説明し、「君たちは早ければ二年後にも国民投票に行って、イエスかノーか答えなけれ
ばならない。二者択一の極めて重い選択だ。だから、正しい知識を君たちに与えることは、学校としての最
低限の義務だ」ということを話します。
その上で、「日本国憲法にまつわる大きな嘘が二つある」ということを説明します。一つは「日本国憲法は
日本国民が敗戦の反省の上に立って自由意志でつくった憲法」という嘘。もう一つは「平和憲法があったか
ら戦後の平和が守られた」という嘘です。「この二つの嘘に対して、真実は何だったかということを今日の
授業で伝える」と言って、私が制憲史をやり、社会科の教員が、戦後の平和は憲法九条によってではなく、
日米安保と自衛隊の存在によって守られてきたという状況論を話します。そしてグループ討論を行い、頃合
を見計らって私がまとめをやり、模擬投票をやって終ります。
─「成立過程」と「憲法九条」の二点に絞っているのですね。
野田 自民党の船田氏などは「最初の国民投票のテーマは環境権に絞る」などと言っています。護憲派を刺
激しないようにという考えなのでしょうが、私は反対です。「環境権」などと言っても、生徒たちには何の
ことか分かりません。「憲法改正=九条」だと、みんな思っていますから。憲法なんて考えたこともない生
徒たちだって、「憲法改正したら戦争になるんじゃないの」と言います。アンケートで「改憲」と答えてい
る生徒ですらそうです。憲法改正=九条なのです。この壁を崩さない限り、憲法改正はできません。憲法学
習をやってみて声を大にして訴えたいのは、改憲のテーマを九条一本に絞るべきだということです。総花的
にやってもダメです。
仮に「環境権」を出して、護憲派から「今は環境権なんてごまかしいているが、九条改正が狙いだろう」と
言われたらどうするのですか。「その通りだ」とも言えませんから、口ごもるしかない。これでは戦いにな
りません。護憲派は「環境権」だろうと何だろうと関係なく、「改憲=戦争」という大キャンペーンを張っ
てきます。
そして「環境権」を出した時に、中共が尖閣諸島に攻めてきたらどうなりますか。護憲派は「それ見たこと
か。安倍政権が憲法改正なんてバカなことをやろうとするから、中国を刺激して戦争になりそうではないか
」と宣伝するでしょう。危機を招いたのは安倍政権の右寄りの姿勢にあるということになれば、まさに護憲
派の思うツボです。
ではどうすればよいか。護憲派は「改憲=戦争」という大キャンペーンを張っているわけですから、それに
対して「改憲=平和」を掲げて国民的大論争を巻き起こすことです。「改憲=平和なのか、戦争なのか」、
九条改正の一点に絞って、国論を二分した議論が巻き起こる。それが、中共に対する最大の抑止力にもなり
ます。下手に刺激すれば、日本の世論を一気に「九条改正」に傾かせることになりますから。
私は警察時代に柔道の選手で、逮捕術も指導していました。青年海外協力隊でマレーシアに行った時、相手
が多数の場合、どうやって制圧するかという稽古をするのですが、原則は一つです。瞬時に一番のリーダー
格を見極めて、その者を倒すことです。リーダーを倒せばこちらの勝ちなのです。織田信長は、桶狭間の戦
いで今川義元の首をまっしぐらに狙って勝ちました。雑兵を相手にしていたら勝てなかったでしょう。憲法
改正という桶狭間の今川義元は、九条です。
そして九条の壁が破れれば、全面改正の道も開けると思います。
最大の利他心としての「愛国心」が生まれた
─憲法の授業で、「護憲から改憲に変わった」という以外に、何か生徒に変化は見られましたか。
野田 勇志国際高校は、開校以来「自信」と「誇り」、つまり、生きていく自信と日本人としての誇りを取
り戻す、ということをテーマに取り組んできました。
日本青少年研究所の国際調査によれば、日本の高校生の六五・八%が「自分はダメな人間だと思う」、八三
・七%が「自分がダメな人間だと思うことがある」と答えています。この数字は、調査対象の四カ国(日米
中韓)の中で飛び抜けて高い。今の日本の高校生は自己否定に陥り、生きていく自信を失なくしているとい
うことです。
我が校の場合はもっと比率が高く、ほぼ一〇〇%が自己否定に陥っていると言っていい。その彼らが、救い
を求めて勇志国際高校に来ているわけです。生きていく自信を取り戻させるために、私たちはいろいろなこ
とをやってきました。
まず「長所を認める」ということをベースにして、大きな効果があがってきました。そして、正しい日本史
―我が校では敢えて「国史」と言っていますが――を教える。スクーリングでは近現代史に絞って、明治
維新から大東亜戦争終結に至るまでの正しい歴史を教えます。それで生徒たちに日本人としての誇りが甦り
、効果があがってきました。
しかし今年、憲法学習をやってみて、「これで完成したな」と思いました。
どういうことかと言いますと、憲法学習で四十分ぐらいグループ討論をやるのですが、その時の生徒たちの
真剣な眼差し、真剣な意見のやり取りを見ていると、感動して涙が出てきますよ。生徒たちにとって、国家
について考え、真剣に議論するなどということは、生まれて初めての経験ですから、もう眼の色が全く違い
ます。そして授業が終った後には、格段に逞たくましくなっている。引きこもりが治り、ヤンチャ系の生徒
もまじめになります。何故だか分かりますか。使命感が出てくるからです。
これまで、そういう生徒を育てることを目指してやってきて、実際効果もあがってきていたのですが、この
憲法学習をやってみて、もっと上があったことに気づきました。
今の子供たちは「権利」ばかりを教えられてきています。だから「利己心」だけが増大して、「利他心」が
全く育っていません。その結果、子供たちは孤立してしまっているのです。心の中に自分でバリアを作って
、その中に引きこもっている。不登校の子もそうでない子も、おとなしい子も元気な子も、等しくバリアを
作っています。これを破ってあげなければいけないのですが、どうすればいいか。バリアの外に感情移入で
きる対象を作ってあげることなのです。
私たちがこれまでやってきたのは、「生徒たちの長所を認める」ということです。長所を認めることによっ
て、生徒たちがまず学校に心を開きます。人は己の長所を認めてくれた人に心を開くのです。心を開いた人
には感情移入できるということです。しかし、まだ針の一穴みたいなもので、それでは不十分です。
私たちが彼らの長所を認めてあげることによって、彼らの心の居場所ができたならば、次の段階として、生
徒たちにお父さんやお母さん、まわりの人たちの長所を書かせます。生徒たちは書かなければいけませんか
ら、長所を探します。そうすると、長所を見る心の姿勢ができる。それで充分なのです。
自分がダメな人間だ、欠点だらけの人間だと思っている時は、まわりの人間も欠点だらけの人間に見えてし
まいます。こんな辛つらい世界はありません。地獄ですよ。ところが自分の長所を私たちが認めてあげると
、まわりの人間の長所も見えてくるのです。そして、まわりの人間の長所を見る姿勢ができた時に、利他心
が生まれてくるのです。長所を認めようとすること自体が、利他心の芽生えです。欠点だらけの人間に何か
してあげたいなんて思いませんから。これによって、生徒たちは他に感情移入ができるようになり、バリア
が破れる。これでずいぶんいい効果が出て、「我が校は成功した」と思っていたのです。去年までは。
ところが、今年になって憲法学習をやってみたら、感情移入の対象が日本という国家になったわけです。感
情移入の対象しては、最大・最高の存在です。最大の利他心としての「愛国心」が生まれたのです。
憲法学習は教員の「政治的中立」に抵触しない
─これから自分のところでも憲法の授業をやりたいと考えている先生方に、何かアドバイスはありますか
。
野田 我が校の教員も最初そうだったのですが、改憲派の先生方が一番懸念されることは、憲法改正を前提
とした授業をやると、地方公務員法や教育公務員特例法に言うところの「政治的中立」に抵触するのではな
いかということだと思います。
憲法九十六条は憲法の改正手続きを定めていて、国民投票法は憲法を改正するために作った法律です。です
から、憲法自体が改正されることを前提としているわけで、改正を禁じているわけではありません。
そして、今回の改正国民投票法では、投票年齢が十八歳以上に引き下げられると共に、公務員の政治的行為
の制限に関する特例が設けられました。第百条の二に、「国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日
までの間、国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明をすることができる」という条文が追加されたわ
けです。
一方で第百三条の二には、「教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に
国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない」とあり
ます。
要するに、教育者に禁じられているのは立場を利用した「国民投票運動」ということになります。立場を利
用しない国民投票運動および意見表明は法によって保証されているのです。では「国民投票運動」とは何か
と言えば、同法には「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」とあります
。つまり、憲法改正案が示されて、それに賛成か反対の投票をするように呼びかける行為のことですから、
改正案が示される以前の憲法授業は「国民投票運動」には当りません。
そして何より、衆参両院の付帯決議に「学校教育における憲法教育等の充実を図ること」とあり、それに基
づいて総務省から文科省へ、文科省から各学校に通達が出されているわけです。
付帯決議が言う「憲法教育等の充実」は、「憲法に関する正しい知識を与えてくれ」という意味であること
は間違いありません。これまで学校で行われてきた憲法の授業は、ほとんどが護憲の立場からの平和授業で
、これは事実に基づいていません。嘘が教えられてきたわけです。その嘘に対して、憲法に対する正しい知
識を与えるために、本校では制憲史と状況論の二点に絞って教えています。
私は県会議員もやっていたから分かるのですが、公務員の管理職や学校の管理職は保守だ、保守だから改憲
派だと安心していると足元を掬すくわれます。「保守=改憲派」とは限りません。むしろ、保守であっても
護憲派がたくさんいるのです。
先日も、福岡県柳川市の二十五ある小中学校のうち、二十四の小中学校の校長が柳川市教育委員会の課長ク
ラスの幹部職員から頼まれて、集団的自衛権反対の署名運動をやっていたことが問題になりました。改正国
民投票法によって憲法改正国民投票に関しての公務員の政治的行為の制限が外されたわけですが、どこから
の要請であったかといえば、民主党です。当然、自治労、日教組からの要望でしょう。朝日の案内は、あま
りにも手てぎわ際が良すぎます。このままでは文科省の通達は、護憲派に利用されるだけです。
文科省が総務省からの依頼文を付けて「憲法教育をやってください」と通達を出しているわけですから、全
国の改憲派の先生方は、大いに憲法の授業をやるべきだと思います。
(九月九日インタビュー/鈴木)